Research Projects

骨格系疾患における病因・病態の分子ならびに細胞レベルでの解明に向けた疾患モデル動物の開発とその表現型の解析

研究の背景と目的

骨や軟骨等に起こる骨格系の疾患は人口の高齢化に伴い非常に大きな社会的関心事となっているが、その病因や病態は多様で複雑である。本研究ユニットでは、このような背景のもと、1)骨粗鬆症、関節炎、椎間板ヘルニアなどの骨格系の主要疾患において重要な病因として働く遺伝子(遺伝的要因)を同定すること、2)発生工学的手法を用いて、あるいは化学的変異原(ENU)などによる誘導によって得られた遺伝子変異系統を新たな動物疾患モデルとして確立することを目的とする。

研究計画

(1)脊柱形成制御に関わる転写因子、Pax1遺伝子の発現調節領域の解析

大阪大学・國府力 准教授との共同研究として、Pax1遺伝子のゲノム領域において硬節特異的な発現を制御するシス調節エレメントの同定に向け、本研究ユニットではトランスジェニックマウスにおける発現解析を担当した。現在までに800 kbに及ぶ領域から候補領域について初代遺伝子導入マウスの解析を行ったところ、2カ所の限定された領域で硬節組織に特異的レポーター発現を確認した。これらの研究結果は、当研究ユニット長及び構成員も共著者となってNature Genetics誌での掲載が決定された。今年度ではさらに研究を発展させる共同研究についての計画を討議する予定である。

(2)椎間板髄核特異的コンディショナルノックアウト実験系の確立

熊本大学・発生医学研究センターの山村研一教授、荒木喜美准教授と共同で、髄核特異的コンディショナルノックアウト実験系の確立を行っている。山村教授のグループで遺伝子とラップ法で同定されたSickle tail (Skt) 遺伝子は、髄核で特異的で強い発現を呈する。現在までにSkt遺伝子のコーディング領域にCreを挿入したSkt-Cre系統が確立された。Creの発現をlacZレポーター発現としてモニターできる系統と交配を行って、Skt-Creの胎児および生後の椎間板におけるレポーター発現解析を行っている。その結果、胎児期においては髄核特異的なレポーター発現が認められたものの、成体の椎間板では非特異的な発現も認められた。現在、組織切片を作製して細胞レベルで陽性細胞の確認を行っている。今年度はこれらの結果を論文として投稿する予定である。

(3)ENU誘導による骨格形成異常変異ラット、Ouneの解析

化学変異原であるENUで誘導された脊柱形成に異常を呈する新規変異ラット系統の解析を行っている。Ouneは優性変異で、ヘテロ個体において発生過程において腰椎、仙椎および尾椎において特に顕著な形成異常が認められる。現在、本研究ユニットでは原因遺伝子に関連した遺伝子群のin situハイブリダイゼーションによる発現解析を行っている。ラットの13日目胎児の切片および体節のマーカーとなるPax1、Uncx4.1、Tbx18、Dll1、Mesp2などのRNAプローブを作製して発現解析を行った。その結果、Pax1とUncx4.1については良好な結果が得られ、現在、Ouneヘテロと野生型との発現パターンの比較を行っている。今年度においては、これらの結果を論文としてまとめる予定である。